パターン3 ①誰もいない!

家族にも社員にも継がせられないとき、どうすればいい?――第三者承継の基本

「後を継ぐ人がいない」というのは、特別なことではありません

60代・70代で現役の経営者はたくさんいます。でも、その中で「もう後継者が決まっている」という方は少数派。「後を継ぐ人が誰もいない」という状況は、けっして珍しいことではありません。

後継者がいないまま時間が経つリスク

このまま「誰にどう継がせるか」を決めずに年月が過ぎてしまうと、次のような問題が起きてきます。

  • もし突然倒れてしまったら、誰も経営を引き継げない
  • 取引先との契約が「社長個人との信頼」で成り立っていた場合、取引が止まる
  • 銀行やリース会社から「信用の見直し」が入り、取引が中断される
  • お客さんやスタッフとの信頼関係が、社長の退任とともに消えてしまう

「事業としての価値」は残っているのに、それを残す準備ができていないために、“自然消滅”のように終わってしまうことが多いのです。

家族も社員も継がない/継げない――そんなとき、何ができるのか?

たとえば、次のような状況はよくあります。

  • 子どもが別の仕事に就いていて、継ぐつもりがない
  • 子どもに苦労させたくなくて、自分の代で終わらせようと思っている
  • 社員はいても、経営を任せられるほどの経験がまだない
  • 特殊な技術や人脈があっても、それをうまく“伝える方法”がない

「誰かに任せたい気持ちはあるけど、現実的な方法がわからない」そんな声を、私たちはたくさん耳にします。

「誰にも継がせずに終わる」という選択もある。でも…

事業を終わらせること――つまり「廃業」も、立派な一つの選択肢です。

実際、「自分の代で終わりにしよう」と考えている経営者は、決して少なくありません。

ただし、ここで大切なのが、

まだ事業として価値があるうちに、きちんと次の選択肢を考えること

長年かけて築いてきた、お客さまとの信頼、スタッフの技術、地域とのつながり。

それは、単なる仕事道具や取引ではなく、あなた自身の人生の成果であり、地域にとっても大切な“財産”です。

こうした価値を誰にも引き継がずに終わらせてしまえば、ご自身の努力が形として残らないばかりか、地域社会にとっても大きな損失になってしまうかもしれません。

「あのお店、気づいたら閉まってたね」
「あの人の仕事、もう誰にもできないんだって」

そんな声が聞こえる前に、そして、まだ動ける今のうちに、“次に託す”という選択肢を持つこと。それは、ご自身の人生をきちんと未来へつなぐことであり、支えてくれた地域への「最後の恩返し」になるかもしれません。

「もう継ぐ人がいない」と思ったときこそ、“誰かに託す”という選択肢=第三者承継(M&A)が検討できる時期なのです。

「第三者承継(M&A)」って、どんな方法?

第三者承継とは、家族や社員以外の人(別会社や個人など)に、事業を引き継いでもらう方法です。いわゆるM&A(企業の合併・買収)という言葉で呼ばれることもあります。

第三者承継と言っても、その引き継ぎ方にはいくつかのパターンがあります。

【1】会社ごとまるごと引き継ぐ

これは、法人の株式(=会社そのもの)をそのまま引き継いでもらう方法です。名前や契約などもそのまま残せるため、銀行との取引や許可・認可の継続にもつながりやすい方法です。

【2】お店やサービスだけを引き継ぐ

たとえば、飲食店やサロンなどのお店の場所、内装、道具、常連さん、スタッフなどを引き継ぐ方法です。会社ではなくても、個人事業のお店でも引き継ぎは可能です。

「店の名前やメニューもそのまま使いたい」という買い手にとって魅力的な方法です。

【3】一部だけを引き継ぐ

たとえば、製造ノウハウやレシピ、看板商品、ブランド、設備などをピンポイントで引き継ぐケースもあります。事業全体ではなく、「これだけは誰かに残したい」というものがあれば、“部分譲渡”という形でも実現できます。

以上のように、引き継ぎの形はひとつではありません。「会社という形」にこだわらなくても、想いや仕事、場所や人とのつながりを引き継ぐことは可能です。

だからこそ大切なのは、「自分は何を残したいか」「どんな形で残したいか」を、自分自身で選ぶこと。

「事業を売る」ことは、決して“手放す”ことだけを意味するものではありません。

「大切にしてきたものを、次につなぐ」という、前向きな選択肢なのです。

M&Aは、最近とても身近になってきています

昔は「事業を売るなんて…」とネガティブな印象もありましたが、今では、「大切な会社を、次の人にしっかり手渡す方法」として広く知られるようになっています。

国や地域の支援も増えていて、

  • 事業引継ぎ支援センター(無料・公的)
  • スモールM&Aに特化した民間サービス
  • 地域密着の専門家(行政書士・中小企業診断士など)

といった支援体制も整いつつあります。

次は、「どう準備すれば引き継げるのか」をご紹介します

「売る」と言われると構えてしまうかもしれませんが、本当に必要なのは、「譲る準備を整えること」。

パターン3の第2部では、

  • 引き継ぐために必要な書類や情報
  • M&Aの流れと注意点
  • どんな人が買い手になるのか

など、できるだけ具体的に・わかりやすくご紹介します。

**→ 続く:パターン3 ②第三者承継を実現するための準備と支援

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